品種の異なるトマトを同時に栽培できるのか？

トマトの食味を決定するのは、品種がとても大切です。いくら上手に育てることができても、その品種が持つ食味特性を超えることはできません。甘いけど酸味がないもの、果皮が硬いものなど、品種によってある程度決まってしまいます。しっかり光合成をできる環境を整えてあげれば、その品種特性が持つ美味しいトマトができます。

当ファームでは今まで2種類の品種のトマトを販売しました。アンケートでは前回のものが好みだったというお客様が7割に達しましたが、残り3割は今回のものをお好みだそうです。お客様からは「前回のものはないの？」と尋ねられたり、「2種類食べたい」という声も頂戴します。

では、同じ時期に2種類以上の（品種の）トマトを栽培できるのか？

答えはYESでもあり、NOでもあります。

まず、YESの理由ですが、温室の灌水システムは系統ごとに肥料と水分管理を行えます。品種ごとに肥料や水の吸収特性が違っていても、系統ごとに制御すれば問題はありません。つまり、栽培管理としてはYES（同時に複数の品種を栽培できる）です。

では、NOの理由です。同じ時期に2種類の品種を植えると、ある大きな問題に遭遇します。それは「品種ごとの生育差で収穫量が安定しない」ということです。仮に2つの品種をA品種、B品種とします。A品種だけなら下の果房から順番に収穫していくため、収穫量は安定しています。もしA品種とB品種を同時に栽培すると、品種ごとに生育差によって、A品種の3段目とB品種の4段目が一度に収穫時期を迎えたり、逆にまったく収穫ができない時期も発生してしまいます。これでは、直売所に並べるトマトの数量が不安定になり、お客様の要望（毎日1個食べるぐらいのペースで買いたい）を満たすことができません。

もぎたてトマト直売所は、作業の都合上、毎日営業することができません。お客様には直売所開店日ごとに次の開店日までに必要なトマトをお買い求めいただいています。収穫量が不安定になると、あるときは店に溢れんばかりのトマトがあり、ある時期はほとんどない、みたいな状況になってしまいます。

ということを考え合わせ、現時点においては安定的な供給を目的とした「一作一品種」という形で栽培しています。すべてのお客様の要望に答えることはできませんが、定期的なアンケートを実施し、お客様の好みのトマトを提供できるように方向修正をしていきます。