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落花生焙煎風景

 11月29日にJAの管理する落花生焙煎所で、自分たちの落花生を煎ってもらいました。持ち込んだ量は50Kgです。そこでいろいろなことがあったので、ご紹介します。 (1)焙煎所 四街道市にある指定の場所に到着しました。その場所は何とも言えず、昭和レトロな感じの建物でした。「本当にココ?」 一見、何をやっているのかわからないぐらいですが、香ばしい落花生の匂いがあたりに漂っているので、すぐにわかります。 (2)熟練職人のオジサン 到着早々、建物の中で忙しそうに働いているオジサンに声をかけました。 「すみません、はじめて来た脇田ファームと申します!」 すると、そのオジサン(以下、煎り職人オジサン)、いかにも焙煎のプロといった感じの方で、大体の流れを説明してくれました。 「煎り窯は3つある。それぞれ23キロと28キロの落花生を一度に煎れる。煎るのに約50分かかるんだが、各窯の最大容量を入れると落花生に焼きむらがでるから、50キロなら3つの窯にわけて入れるぞ!」 「煎っている間も黙って見ていてはダメだ。自分の番が来るまでは、他の人の手伝いをしなさい。ここは農協で、それが農業協同組合って言うものだ。」 正直に白状すると、自分の番が回ってくるまでは、車の中でゆっくり待っているつもりでした。でも、そうはいかない感じです。だって、ここは農協なんですから。 (3)お手伝い 自分の前の人の落花生が煎り終わったようです。煎り職人オジサンがピリピリしています。「おい、そこで立ってないで、コンテナを受け取って、さっさと広げるんだ!」 煎り窯から次々出てくる炒りたての落花生がコンテナに吸い込まれます。そのコンテナを煎り職人オジサンが床を滑らせてこちらに投げてきます。自分と妻はその受け取り列に並んでコンテナを受け取り、出口前に広げたゴザの上に落花生を広げなければいけません。もたもたしていると、煎り職人オジサンから一喝! 「こら!もたもたしてると余熱で焼けちゃうぞ!」 「さっさと、落花生を熊手で広げるんだ!」 はいはい、と焦りつつ、右往左往しながらなんとか広げ終わります。煎り職人オジサンが出てきて、「ほら、これ食ってみろ!」とゴザに広げられた炒りたて落花生を私たちに差し出します。あれ?これ人のだけど、勝手にもらってもいいのかな?なんて思っていると、 「人のを食べるのも勉強だ」「これお互いさま」なんて煎

スーパーに並んだトマトはなぜ消費者の要望を満たせないのか

写真はスーパーで販売されている典型的なトマトです。色は真っ赤ではないけど赤っぽく、果皮は硬めです。形も悪くなく、見た目もよいのですが、このトマトは消費者の要望を満たせていないようです。どうしてでしょう?

直売所に来たお客様に、いつもはどこでトマトを買い求めているのか聞くことにしています。多くの方は「スーパー」と答えます。しかし、その次に「スーパーのトマトはちょっとね」という一言が必ずついてきます。詳しく聞いてみると…

・スーパーのトマトは美味しくない
・どこで買っても同じような感じ
・赤いトマトを買って切ると中味はぐちゃぐちゃ、青っぽいものは味がしない

といった意見が多く聞かれます。

つまり、「スーパーに並んだトマトは消費者の要望を満たしていない」ということだと思います。これは数多くのトマトを食べた自分も同じ感想を持っています。

ではなぜそうなのか?農家としてトマトを直売している自分、それからスーパーの青果部門でアルバイトをしていた自分の視点として考察してみます。

この問いの答えは、「消費者とスーパー両方の都合による結果」だと思います。


まず、消費者がスーパーに求めることは、以下の通りです。
・いつでも買える
・安く買いたい
・美味しいものを買いたい

一方、スーパーの要望は、以下の通りです。
・季節を問わずいつでもトマトを並べたい(欠品させない)
・廃棄をしたくない

特に、欠品はスーパーの運営サイドが最も嫌う状況です。別の言い方をすれば、売り上げが落ちる販売機会損失をとても嫌います。特にトマトは年間を通じてコンスタントに売れる商材であるため、販売機会損失はそのまま大きな売上減につながります。また、廃棄をしないことは、利益につながります。消費者から値下げ圧力がかかるため、廃棄が少なければトマトの価格も下げられることになります。

両方の要望を照らし合わせると、スーパーでは完熟トマトを並べられないことがわかってきます。完熟トマトは仕入れた時点で熟度が進んでおり、棚持ちが悪くなります。売れ残れば、すぐに廃棄することになってしまいます。また、スーパーでは先出先売りのため、棚に並べたトマトが売れていなければ、新しく仕入れたトマトは冷蔵庫で出番を待つことになります。つまり、仕入れたらすぐに棚に並ぶわけではありません。この観点でも日持ちのするトマトが必要です。
また、スーパーの客足というのは天気に大きく左右されるため、せっかく完熟トマトを仕入れて並べても、悪天候が続けば日持ちの悪い完熟トマトは売れ残り即廃棄となってしまいます。廃棄をすればするほど、原価が上がってしまい、消費者からの値下げ圧力に耐えられません。この観点でも完熟トマトはダメなんです。


では、実際にスーパーに並んでいる「少し赤くなったときに収穫した未熟なトマト」はどうでしょう。これこそが、消費者とスーパーの両方の要望をほぼ満たすことができるトマトです。

未熟なトマトは、まだ硬いうちに収穫するため日持ちがします。(棚もちが良い)
もし、売れ残ったとしても、すぐに廃棄する必要がなく、私の経験だと1週間ほど売れ残っても、赤くはなりますが、しっかりした形を保っているものがあります。でも、この古いトマトは、内部のエネルギーを消費しながら熟しているため、内部組織が崩壊しています。その結果、「切ると中味がぐちゃぐちゃ」とか「ゼリー部分がダラダラでてくる」いう評価につながってきます。つまり古いんです。
運よく仕入れてからすぐに買われてしまったトマトは、そもそも味がのっていない状態で収穫されたため、消費者の評価は「青いトマトは味がしない」という評価になります。

このようにいろいろな課題がある未熟なトマトでも、スーパーからすれば棚持ちはよく、廃棄も少ないため、結果的に原価を下げ利益につなげることができます。スーパーにいけばいつでもトマトが売られているという要求も満たされ、小売価格も下げることができます。

すなわち、この「少し赤くなったときに収穫した未熟なトマト」は、スーパーと消費者両方の要望を満たすことができてしまうわけです。(食味以外)
スーパーのトマトの食味について消費者が満足していない理由は、こんなところだろうと思います。

もし、スーパーで完熟に近い美味しいトマトを並べてほしいといった場合、消費者は以下のことを我慢しなければいけないはずです。
・いつもトマトがないかもしれない
・価格はもっと高くなるかもしれない

でもこれはきっと消費者も納得しないだろうと思います。なので、消費者とスーパーが折り合いをつけると、少し赤くなったときに収穫した未熟なトマト」に落ち着くわけです。その反面、食味だけは消費者の要望を満足できない結果になります。

いかがでしょうか。スーパーのアルバイトでいろいろ見聞きしたことを参考にして考えてみました。ピンとくる回答でしょうか?
最近は、この状況をなんとか回避しようと、果皮が硬く、熟度が上がっても日持ちがするトマトの品種開発が進んでいます。一程度の効果は見込めると思いますが、完熟状態で収穫してから時間が経ちすぎると、今度は過熟(熟しすぎ)という問題に直面し、ふたたび食味が悪くなってしまうでしょう。やはり、美味しいトマトを食べるためには、適切に完熟状態で収穫したトマトをすぐに買う、食べることが必要だと思います。

当ファームの完熟もぎたてトマトは、スーパーのトマトでは実現できない付加価値を提供できるよう努力を重ねています。反面、一年中販売できるわけではない、価格も安くないというデメリットが生じます。ここをお許しいただけるのであれば、スーパーでは決して買うことができない「完熟もぎたてトマト」のうまみをお試しいただきたいと思います。